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【第1079話】 「永世七冠」 2017(平成29)年12月11日-20日

1079.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1079話です。

 思えば一年前の12月24日、最年少棋士藤井聡太四段がデビュー戦で、最年長棋士加藤一二三九段を破り、14歳5カ月での最年少勝利記録を打ち立てました。以来負けなしの29連勝。将棋界が俄然注目を集めた一年でした。

 そして今月5日、将棋ブームの一年を締めくくる大トリ登場。将棋界のトップ羽生善治さんが竜王戦を制し、史上初の「永世七冠」を達成しました。永世称号のある七つのタイトル全てで、永世資格を手にしたことになります。一つのタイトルを取ることでさえ至難なこと。永世称号は七つのタイトルによって異なりますが、五回から十回それぞれを保持しなければならないのです。

 将棋人口から言えば、プロの棋士はわずかです。若くして神童と呼ばれるような棋士の中で、熾烈な競争を経て、ほんの一握りの天才がプロになるのです。その天才同士がしのぎを削って、盤上の戦いを繰り広げるのですから、一勝するのも並大抵ではありません。ましてやタイトル保持者になり、更には永世称号までの道のりは、気の遠くなるような話だといわれます。

 将棋ブームと相まって、人工知能によるコンピューター将棋の進化が加速しています。短時間に多くの手を読む力は、もはや人間を上回っています。これに対して脳科学者は、人工知能と生身の人間を比較するのは、本来条件が違うのでおかしいと言っています。100メートル走で人間と自動車を比較するほど意味がないというのです。

 羽生さんといえども人間です。体調や日々の生活を考えれば、常に最良の状態で対戦できるとは限りません。そんな中で、19歳で当時最年少タイトル保持者になり、以来30年近く常にタイトルを保持し続けてきたのです。どれほどの探求心と弛まざる節制精進があったのかと思わずにはいられません。

 羽生さんは昔こんなことを言ってます。「大切なのは過程です。結果だけならジャンケンでいい」。何時間も何日も戦う将棋の一手一手の過程の中に、どれだけの読みや感情の動きがあるものでしょうか。きわめて人間臭い時間の流れの中での勝負です。人工知能にはない息遣いを感じます。

 「万法一に帰す(ばんぽういつにきす)」という禅語があります。森羅万象すべてのことは、絶対的存在の「一」に帰するということです。羽生さんは、生活環境を含め鍛錬や精神力などという万法をもって、「一に帰する」が如く、渾身の一手を指し続けててきたのでしょう。そして「一」は万法に帰るともいわれます。羽生さんの「永世七冠」は、すでに万法からはみ出している観があります。

 ここでお知らせ致します。11月のカンボジア・エコー募金は、241回×3円で723円でした。ありがとうございました。

 それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

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