テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1319話】「お盆の結集(けつじゅう) 2024(令和6)年8月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1319話です。

 「如是我聞」(かくの如く我聞けり)と、お経は始まります。お経はお釈迦さまの教えですが、当初それは文字で記録されませんでした。後に聞いた記憶をたどって、経典が編集されました。よって、「私はこのようにお釈迦さまの言葉を聞いた」という断りを最初に述べるわけです。

 お釈迦さまが亡くなると、その教えは弟子たちの記憶にしか残っていません。当然記憶違いや異なる意見が出ます。そこで、お釈迦さまが亡くなった翌年、仏典の編集会議が招集されました。このことを結集すると書いて「結集(けつじゅう)」と言います。長くお釈迦さまのお傍について、誰よりもその教えを聞いたので「多聞第一」と称された弟子の阿難が中心となって進められました。500人の弟子が集まり、お釈迦さまの説法を整理し統一して、文字に示し経典となりました。

 お釈迦さまの説法は「対機説法」と言われます。その人の機つまり能力や素質・環境などに応じて、臨機応変に説法の仕方を変えて諭されました。医者が患者の病状に応じて薬を処方するようにです。結集が何度か繰り返される中で、夥しい教えが経典となり、時代を超え、お釈迦さまの思いが、私たちに伝わってきました。

 さて、お盆は普段会えない家族や親戚が一堂に会する絶好の機会です。みなさんでお墓にお参りをし、自宅では迎え火や提灯を灯し、ご先祖さまをお迎えして、ひと時を過ごすことでしょう。盆棚にはよく西瓜がお供えされています。〈十人の 集まれば切る 西瓜かな〉(稲畑汀子)という俳句があるように、一人で西瓜は食べにくいものです。家族揃ったところで盆棚の西瓜をお下がりとしていただきながら、ご先祖さまの思い出話に花を咲かせるのは、何よりの供養になります。

 「おばあちゃんのお煮つけは絶品だったね」「あの時叱ってもらったから、道を外れずに済んだ」「おじいちゃんは、酔っぱらうと気が大きくなってお小遣いをくれたっけ」等々。このようにして亡き人を偲ぶことが、みなさんにとっての「結集」でしょう。普段は意識せずとも、お盆にご先祖さまをお迎えすると、その命のつながりの中で、多くのおかげをいただき、今の自分があることを実感できます。亡き人も「たまには私のことを思い出してくれたらうれしいな」と思っているはずです。

 こんな歌に出会いました。〈噴水にたつ 虹ほどの淡さにて 人の心に棲みたし死後は〉(長尾幹也)大空に架かる虹は、弟子たちの結集により経典となったお釈迦さまの教えとすれば、噴水のそばにできた淡き虹は、折に触れ浮かぶ亡き人の様々な色合いの思い出話でしょうか。それは七色の虹の結集のようです。

 ここでお知らせいたします。7月のカンボジアエコー募金は、932回×3円で2,796円でした。ありがとうございました。
それでは又、8月21日よりお耳にかかりましょう。  

        

最近の法話

【1322話】
「醍醐味は元気でゆっくり」
2024(令和6)年9月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1322話です。 牛乳の精製過程の5つの味のうち、最後に出てくる最上の味を醍醐味と言います。仏教ではそれを最高の境地の涅槃にたとえます。そして醍醐の原語は「サルピル・マンダ」で、あのカルピスの名称の元であると言われます。そのカルピスが好物で、116歳の今も元気で世界最高齢に認定されたのは、兵庫県の糸岡富子さんです。 カルピスと長... [続きを読む]

【1321話】
「0歩目の奇跡」
2024(令和6)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1321話です。 1996年8月21日(水)甲子園の決勝戦は、松山商と熊本工。3対3の同点で10回裏熊本工の攻撃、1死満塁で3番本多選手。松山商は絶体絶命のピンチ。監督は守備交替で矢野選手をライトに起用。その直後、本多選手の打球は高々とライトへ、3塁ランナーは俊足の星子選手。実況中継も「行った、... [続きを読む]

【1320話】
「必死すなわち」
2024(令和6)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1320話です。 パリ・オリンピックの新競技「ブレイキン」は、1970年代アメリカニューヨークの貧困地区の路上が発祥。縄張り争いに疲れたギャングのボスが「音楽と踊りで勝負しよう」と呼びかけたのが始まりとか。オリンピックにふさわしいです。 オリンピックは元を糺(ただ)せば、戦争の代わりに様々な争... [続きを読む]