テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1241話】「砂のロマン」 2022(令和4)年6月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1241話です。

 その昔、近くの農協の窓口に「南極の石」が飾ってありました。地元出身の海上自衛隊員で南極観測に派遣された方が寄贈したものです。見た目には普通の岩石と変わりませんが、想像もつかない遥か彼方の極地の石と思えば、ロマンがかきたてられます。

 さてこちらは、わずか5.4グラムの砂ながら、更なるロマンに満ちているようです。宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ2」が、地球に持ち帰った砂です。前人未到の小惑星「リュウグウ」から採取された砂は、一昨年12月地球に帰還しました。昨年6月から各地の研究者が、本格的な分析を進めていました。

 その結果、アミノ酸が20種以上見つかりました。アミノ酸はたんぱく質の材料です。たんぱく質は、炭素・酸素・水素・窒素などを含む化合物で、生物細胞の原形質を構成するものです。つまりアミノ酸は生命に欠かせないものです。それが地球以外で初めて確認されたのです。因みに、リュウグウの砂が入っていたカプセルは玉手箱と呼ばれていました。開けてびっくりな宝物を運んできたわけです。

 この度のアミノ酸には、コラーゲンの材料になるグリシンやうまみ成分のグルタミン酸も確認されています。コラーゲンやグルタミン酸などと聞くと、宇宙の話のはずが、一気に茶の間の話題になってしまいます。美肌効果や骨粗鬆症防止のためコラーゲンを多く含んだ肉や野菜を食べたり、そのサプリメントも大量に出回っています。また、昆布だしのおいしさの正体はグルタミン酸ですが、それを100年以上前に発見したのは日本人です。いまやどこの台所にもうまみ成分が多い昆布だしや調味料が揃っています。

 そんな身近な命の元が、直径約900メートルのそろばん玉のような形状の小惑星リュウグウにあったのです。リュウグウは地球から3.5億キロkm離れています。火星との間にあって、1999年に発見されました。約45億年前に太陽系が誕生した当時の情報を持つ天体と考えられています。そして誕生したばかりの地球には、もともとアミノ酸がたくさんあったようです。その後マグマに覆われて、いったん失われました。そして地球が冷えた後に海ができ、飛来した隕石がアミノ酸を改めてもたらしたのではないかという仮説がありました。その仮説を後押しする発見となりました。

 よく私たちは、亡き人は天に逝ってしまったとか、星になって見守ってくださいなどと言うことがあります。キリスト教ならともかく、お釈迦さまは死後のことは無記といって特別に答えてはいません。しかし、生命の源が宇宙にあるとしたら、広い意味で死んだら宇宙に還るというのは、わかりやすいことです。たとえ愛しい人が亡くなっても、星になっていると思えば、いつでも会えます。はやぶさ2の砂のロマンは、まさに「ロマン砂」話でした。

 ここでお知らせいたします。5月のカンボジアエコー募金は、681回×3円で2,043円でした。ありがとうございました。

 それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1325話】
「はらこめしと仏飯」
2024(令和6)年10月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1325話です。 わが山元町は小さな田舎町ですが、この時期、行列ができる店があります。「はらこめし」を提供している店です。はらこめしは、鮭の煮汁でご飯を炊き込み、その上に鮭の切り身とはらこをのせたものです。はらことは鮭の卵いわゆるイクラのことです。隣の亘理町荒浜が発祥の地ですが、亘理郡内に行き渡っていて、家庭ごとに自慢の味付けがあ... [続きを読む]

【1324話】
「少年の心
達磨の心」
2024(令和6)年10月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1324話です。 心理学者の児玉光雄は、大リーグの大谷選手を「少年の心を持つスーパーアスリート」と表現しています。少年時代から野球を楽しむ心を忘れず、自発的に物事に取り込める姿勢が、想像を超えた活躍に繋がっているというのです。 大谷選手は50-50つまり、50本塁打50盗塁という夢のような記録... [続きを読む]

【1323話】
「土俵に彼岸を見た」
2024(令和6)年9月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1323話です。 大相撲秋場所6日目結びの一番。大関豊昇龍が平幕王鵬にすくい投げで敗れました。余程悔しかったのでしょう。土俵を拳(こぶし)で突き、きちんと礼をすることなく、花道に向かったところ、審判長に呼び止められ、再び土俵に上がります。そこでも礼が合わず再びやり直しをさせられました。洒落ではあ... [続きを読む]