テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1167話】「レインボーフラワー」 2020(令和2)年5月21日~31日


レインボーフラワー

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1167話です。

 東日本大震災の時、桜が咲いたことさえ気づきませんでした。まして、被災地で花見をした人など誰もいなかったことでしょう。あれから9年、今年は新型コロナウイルス感染の予防のため、各地でお花見の自粛が求められました。

 そんな中でも、感動的な花との出会いがありました。5月12日のこと、境内の池のほとりに、紫色の花が咲いているのに気が付きました。それはジャーマンアイリスという花で、奈良県の山本公子さんが、お持ちくださった球根を植えたものでした。山本さんは去年の5月12日に、旦那様と一緒にフェリーと電車を乗り継いで、奈良県から徳本寺にお出でなったのです。あれからちょうど一年経ったその日に、花が咲いたのですから、驚きです。

 山本さんは東日本大震災の惨状をテレビで見て、辛かったろう、苦しかったろう、どんな言葉をかければいいのだろうと、ショックのあまり呆然とした日々を過ごしたと言います。ある時、近くの転法輪寺様で行われている、被災地支援のにぎり地蔵奉納の活動に参加しました。それは徳本寺の末寺で津波で流された徳泉寺復興の「はがき一文字写経」のご縁で、陶芸家が呼びかけた「一心地蔵」の奉納です。6センチほどの手を合わせた姿の地蔵さんを土をにぎって作り、窯で焼いて仕上げるのです。

 「舎利礼文」というお経の76文字が、一体に一文字写経されて、76体が平成29年3月に奉納されました。勿論山本さんが作られた一体も含まれています。そして、いつの日にかお地蔵さんが奉納された寺をお参りしたいと強く願うようになり、昨年それが実現したというわけです。

 被災地の復興を願い、遠くにいても忘れませんよというメッセージが込められた地蔵さんを、一つひとつ手作りし、そこに写経をして、奉納いただくだけでも、感謝しきれません。それなのに、わざわざ被災地まで足を延ばして、お参りくださったことに頭が下がる思いがしました。その上、一日も早く元の生活に戻れますようにとの祈りを込めてお持ちいただいたジャーマンアイリスです。

 アイリスはギリシャ語の虹という意味で、ジャーマンアイリスはレインボーフラワーとも呼ばれています。山本さんの祈りが通じたのでしょう。遥か奈良県から宮城県に虹を架けたかのように、ジャーマンアイリスは花を咲かせました。

 良寛さんの言葉に「花は無心にして蝶を招き 蝶は無心にして花を尋ぬ」というのがあります。山本さんは被災地の人々にかける言葉がなかったと言いますが、百万語にも匹敵する被災地に架ける虹の花を咲かせて下さいました。その花は蝶という復興を招きました。私たちも復興したことに驕らず、おかげを想い、今度は私たちもどこかに花を咲かせられるようでありたいと無心に願っています。

 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

一文字写経と一心地蔵

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