テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1150話】「自然のまま」 2019(令和元)年12月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1150話です。

 1日24時間年中無休で営業しているコンビニが、日本列島に5万店舗以上あります。寺院数よりは少ないものの、郵便局の倍以上です。確かに便利です。しかし、これは自然なことなのでしょうか。人は陽が昇れば目を覚まし、星の瞬きと共に眠りに就くのが、生物的に理想的な生き方といえます。

 しかし、文明の進歩は、自然に生きること以外に価値観を生み出すようになりました。いつでもどこでも何でも手に入る便利さという欲望に溺れてしまいました。それが不自然であると、もはや誰も思いません。

 今年2月にコンビニ最大手のセブン-イレブンの東大阪市の店主が、本部の反対を振り切って、24時間から短縮営業して社会問題になりました。人手不足とそれに伴う人件費の高騰が背景にあってのことです。そしてここにきて、コンビニ2番手のファミリーマートは、営業時間について、希望すれば24時間からの短縮を認める方針を固めました。「脱24時間営業」が広がり、コンビニの転換点になるのではと、注目されています。来年の元旦には休業するコンビニも現れるようです。これは自然な流れではないでしょうか。

 さて12月8日は、お釈迦さまがお悟りを開かれた成道会(じょうどうえ)です。お釈迦さまは、苦しみ悩み多き世にあって、安らかな生き方を思案する中で、29歳の時に出家をして、山に籠ります。そこで他の修行者と共に、極端な難行苦行を試みました。何日も飲まず食わず眠らずに過ごすとか、徹底的に身体を痛めつける方法です。6年間も続けましたが、やせ衰えるだけで、心の悩みは深まるばかりでした。

 このような修行が役に立たないことに気づき、山を下り尼蓮禅河(にれんぜんが)で身体を清められました。その時たまたま村の娘に乳粥を施され、気を取り直して、菩提樹の根元で坐禅を組まれました。すると村人の歌声が聞こえてきました。「糸が強けりゃ強くて切れる。糸が弱けりゃ弱くて鳴らぬ。緩急よろしく調子をあわせ、ほどよく歌え、ほどよく踊れ」まさに弦の張り方と同じように、修行も苦楽の両極端に陥るのは邪道だと納得します。

 それから7日間坐り続けて、12月8日の明けの明星をご覧になり、突然に心が晴れ渡ったような思いを抱きました。そして「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」つまり草木も国土も自然そのもの、偽りのない仏の姿であるとおっしゃいました。

 命あるものは自然のままに生きることが、何よりも大切であるということに目覚めなさいとの教えでもあります。自然のままとは、常に変化し続けるということです。時間・季節・命みんな移りゆくものです。自然なる朝には何が見えるのでしょう。自然なる夜には、何が見えないのでしょう。少しコンビニの存在を忘れて思い起こしてみましょう。

 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1321話】
「0歩目の奇跡」
2024(令和6)年9月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1321話です。 1996年8月21日(水)甲子園の決勝戦は、松山商と熊本工。3対3の同点で10回裏熊本工の攻撃、1死満塁で3番本多選手。松山商は絶体絶命のピンチ。監督は守備交替で矢野選手をライトに起用。その直後、本多選手の打球は高々とライトへ、3塁ランナーは俊足の星子選手。実況中継も「行った、これは文句なし」と断言したほど、熊本... [続きを読む]

【1320話】
「必死すなわち」
2024(令和6)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1320話です。 パリ・オリンピックの新競技「ブレイキン」は、1970年代アメリカニューヨークの貧困地区の路上が発祥。縄張り争いに疲れたギャングのボスが「音楽と踊りで勝負しよう」と呼びかけたのが始まりとか。オリンピックにふさわしいです。 オリンピックは元を糺(ただ)せば、戦争の代わりに様々な争... [続きを読む]

【1319話】
「お盆の結集(けつじゅう)
2024(令和6)年8月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1319話です。 「如是我聞」(かくの如く我聞けり)と、お経は始まります。お経はお釈迦さまの教えですが、当初それは文字で記録されませんでした。後に聞いた記憶をたどって、経典が編集されました。よって、「私はこのようにお釈迦さまの言葉を聞いた」という断りを最初に述べるわけです。 お釈迦さまが亡くな... [続きを読む]