テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1133話】「ネット勧進」 2019(令和元)年6月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1133話です。
東京の目黒不動のそばに、五百羅漢寺というお寺があります。当初は名前の通り、五百体の羅漢像がありました。現存するのは305体ですが、ひな壇にずらりと並んだ羅漢像を拝むと、実に壮観です。羅漢とは悟りをひらいた高僧のことです。この羅漢像はたった一人の手でで彫り上げられました。元禄時代の僧侶で仏師でもあった松雲元慶が、十数年の歳月をかけて成し遂げた大事業です。そのために、江戸の町を托鉢をして浄財を集めるという勧進も続けたのです。こうして元禄8年五百羅漢寺を開かれました。松雲は生涯で700体を超える仏像を彫ったといわれます。
その松雲が師と仰いだのは、鉄眼道光です。五百羅漢寺を開くときには亡くなっていましたが、松雲は自分を第一代とはせずに、鉄眼を勧請して開山としました。鉄眼は江戸時代初めの寛文4年に「日本に仏教がもたらされてから、千年以上になるが、重要な仏教聖典の集成である大蔵経が一度も刊行されていない。何としてもこれを刊行して仏の教えを広めよう」と発願しました。
当時は版木による印刷です。大蔵経は約7千巻あり、版木の数にして6万枚にもなります。気の遠くなるような難事業です。しかし、どんな困難にも屈しないという決意の下、十数年諸国を行脚して、人々に仏の教えを説きながら、大蔵経刊行のための浄財の勧進に力を尽くしました。
その間、2度の天災飢饉に見舞われ、経典刊行よりも人命救済が大事とばかり、せっかく集まった浄財を差し出します。この頃に松雲は鉄眼の弟子になっています。この師匠あってこの弟子です。鉄眼は度重なる困難をのり越え、とうとう大蔵経を刊行しました。大蔵経の中には大般若六百巻も含まれます。因みに徳本寺にある大般若経も鉄眼の作った版木によるものです。
鉄眼や松雲の勧進とは、まったく趣を異にしますが、現代の勧進といえば、クラウドファンディングです。インターネットを介して、自分が起案した事業を紹介し、賛同する不特定多数の人から資金を調達するというものです。アメリカで始まり、日本では東日本大震災があった2011年3月に、レディフォーという会社が始めています。
徳泉寺も「はがき一文字写経」の勧進で震災からの復興を目指しています。現在は復興の仕上げとしてクラウドファンディングでも勧進を試みています。復興への道のりを伝える記録誌『青空があるじゃないか』を刊行し、ご支援のみなさまに配布するという事業です。鉄眼の大蔵経刊行には及びもつきませんが、ネットという諸国を行脚しながら、今一度、震災のことに向き合っていただきたいという想いで、様々な情報を発信しつつ、支援を呼びかけています。そうしネット、肝心の資金が集まらないのです。「レディフォー一文字写経」で検索してみてください。
【詳細はコチラ】
ここでお知らせ致します。5月のカンボジア・エコー募金は、164回×3円で492円でした。あっこれも勧進のひとつですね。ありがとうございました。
それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。
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