テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1312話】「規格外のエンジン」 2024(令和6)年6月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1312話です。

 「持っているエンジンが違うよ」「相撲界の大谷翔平と言われるかもしれない」。大相撲夏場所で初優勝を果たした小結大の里の評判です。昨年夏場所の初土俵からわずか1年、所要7場所での幕内優勝。大銀杏が結えないほどのスピード出世できる規格外のエンジンです。

 出身は能登半島の根元石川県津幡町です。元旦に起きた能登半島地震から5カ月、やっと明るい話題ができ、地元では「石川の誇り」と沸いています。小学生時代から相撲教室に通いました。当時は強い子ではなかったそうですが、学生時代には学生横綱や2年連続アマチュア横綱に輝くなどして、鳴り物入りで各界へ入りました。

 実は今から11年前、私も津幡町を訪れたことがあります。その頃は中学生であろう大の里少年にすれ違っていたかもしれません。津幡町瓜生は曹洞宗大本山總持寺の2代目峨山禅師が生まれたところです。信心深い母は文殊菩薩に祈り続け、玉のように大きな男の子を生みました。今から748年前のこと。源氏の武将の子孫という説があります。賢くたくましく育ち、16歳で出家します。總持寺を開かれた瑩山禅師との出会いにより、めきめき頭角を顕わします。

 当時總持寺は能登半島の輪島市門前町(まち)にありました。海上交通を活用し、瑩山禅師が曹洞宗の教えを全国に広める基盤を作りました。その後を継いだ峨山禅師が、42年間總持寺の住職として、人材育成などに力を尽くします。二十五哲と言われるたくさんの俊才を輩出し、曹洞宗を1万5千カ寺に及ぶ大教団に発展させました。

 また峨山禅師は65歳で、瑩山禅師が總持寺より先に開いた羽咋市の永光寺(ようこうじ)の住職にもなります。そして總持寺と永光寺の維持発展に努めます。その間を往来した13里(52キロ)の山道は「峨山道」と呼ばれています。夜中に永光寺で朝のお勤め(朝課)を済まされ、山道を走り、總持寺での朝課にも間に合わせたという超人的な伝説があるほどです。總持寺・永光寺にはその木像が安置されていますが、確かに眼光鋭く屈強な体格で尊厳なるお姿です。まさに「持っているエンジンが違う」という行状です。

 津幡町の峨山禅師生家の近くに顕彰碑が建てられ、毎年6月23日には生誕祭が行われます。家々には五色の仏旗が立てられ、関係僧侶は勿論、地元の方々も峨山禅師の遺徳を偲んで焼香されます。峨山禅師は瑩山禅師よりお悟りを得たというお墨付きをいただきながらも、更に仏道を究めるべく、諸国行脚に出ます。この時の出会いが、後の曹洞宗の全国展開につながったともいわれます。郷土の偉人として生誕をお祝いされる人物の原点を見る思いです。

 さて大の里は師匠の二所ノ関親方に「優勝しても喜ぶな」と言われ、「本当に強いお相撲さんになっていきたい」と力強い言葉を残しました。悟って尚諸国行脚に向かった郷土の偉人の足跡をたどるかのようです。それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。   

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