仏事を説示
卒塔婆(そうとうば)
おかげさまで、秋彼岸会に行われる大施餓鬼会において、年々塔婆供養をなさる方が増えています。
塔婆を立てて、ご先祖さまを偲ぶことは、一番身近な供養として、日常的に行われていることです。では、塔婆とは一体何なのでしょう。
今回は「塔婆」についてのお話です。
(答えは本文の最後に)
- 問 ズバリ、塔婆って何ですか。
- 答 本来は梵語の「ストゥーパ」を音写したもので、塔の意味があります。
- 問 五重の塔や墓石も関係がありますか。
- 答 広い意味では、それらも含みます。元々、お釈迦のご遺骨を埋めたところに土を盛り、塔を立てたのが、お墓(塔:ストゥーパ)の始まりとされています。
- 問 一般に塔婆というのは細長い木製のものを指すのではないですか。
- 答 普通の板塔婆、柱のような角塔婆、小型で薄い経木(きょうぎ)塔婆などがあります。
- 問 墓石という立派な塔があれば、木製の塔婆はなくてもいいのではないですか。
- 答 木製の塔婆の由来は、仏教によってもたらされたというよりは、仏教伝来以前からある「依代」(よりしろ)と関係があるようです。
- 問 依代って初めてききますが。
- 答 神霊が現れるときに宿ると考えられているもので、常盤木(ときわぎ)を立てて、神聖なところとして「神籬」(ひもろぎ)と呼んでいました。それが仏教化して、卒塔婆になったという説があります。
- 問 そういえばちょっと前まで、三十三回忌のとき「杉塔婆」(すぎとうば)というのを立てていましたが、関係ありますか。
- 答 三十三回忌のとき、弔(とむら)いを上げなどと称して、「梢付塔婆」(うれつきとうば)という枝葉がついたままの生木を立てることは、各地でみられます。杉塔婆には故人の霊が祖霊へと昇華する依代の意味があるのでしょう。
- 問 杉塔婆はほとんど見かけなくなりましたが、現在の塔婆は上の方にギザギザがありますが、あれは意味がありますか。
- 答 「五輪塔婆」(ごりんとうば)のことですね。墓石にも「五輪塔」というのがあり、よく見ると同じ形になっています。
- 問 五輪(オリンピック)のときだけ立てるわけではないのでしょう。
- 答 まさかです。五輪は下から順に、地・水・火・風・空を表わし、万物の構成要素を象徴しています
- 問 五輪塔は宇宙のシンボルですか。
- 答 宇宙のすべては地・水・火・風が仮に和合した縁によって成り立っている。即ちそれが「空」だという教えです。また、人間も小宇宙として、地=体、水=血液、火=体温、風=呼吸とされ、これら四大要素が調和している状態を空と呼びます。しかし空ですから、いつかは四大が乱れる、つまり死ぬときがやってきます。「四大不調で亡くなった」というのがそれです。
- 問 なるほど。それから五輪塔は人の身体にも見えますね。
- 答 そうです。上から、頭・顔・胸・腹・足をあらわすともいわれます。
- 問 塔婆には何が書かれているのですか。
- 答 表には、短い経文と戒名を書き、裏には、施主名などを記します。塔婆は仏体そのものであり、仏の教えを表すものでもあるからです。
- 問 いつ立てればいいのですか。
- 答 その昔、篤信者が、年忌ごと仏像を建立して先亡者の供養したようですが、それは経済力がなければできません。それに代わるものとして、板塔婆ができたと思われます。ですから基本的には年忌ごとに立てます。またお盆・お彼岸等における塔婆供養もたいへん功徳のあることです。
- 問 古い塔婆はどうしたらいいのですか。
- 答 新しい塔婆を立てたとき、それまでの塔婆は清浄な地で焼却します。
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