テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第871話】「根っこのこころ」 2012(平成24)年3月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第871話です。20120301-2.JPG
 「まけないタオル」の勢いが止まりません。山形の松林寺住職三部義道さんが発案した、ちょっと短めのタオルで、首にも頭にも巻けないが、大震災にも負けないというメッセージが込められたものです。被災している方に配布するのはその通りですが、それを支援する方も同じタオルを持っているというところが、大きな広がりに繋がっているのかもしれません。とうとう5万枚に達しそうだというのです。
 そのテーマソングを作ろうということで、私が作詞をして、作曲し歌っているのは「歌うお尼さん」ことやなせななさんで、CDになりました。この歌の力も広がりに一役買っているようです。なにせ、合唱曲になったり、高校の吹奏楽で演奏されたり、「まけないタオル」のダンスまで登場してきています。
 その3番の歌詞に「大樹にまけない 根っこのこころ 揺るぎはしないから」という一節があります。書いてから、あまりに出来過ぎという印象がありました。なぜなら、地元の沿岸部にある松林は根こそぎ大津波に流されているのです。現実は歌詞の世界とは違うぞという思いがよぎりました。しかし、よく現場を見渡せば、立派な現実があったのです。沿岸部のお檀家のSさんの屋敷には、流されず残った大樹がありました。Sさんの家屋もあたり一帯の家屋もすべて流されたにもかかわらず、大樹は残って、てっぺんには青い葉をつけています。その大樹は、樹齢300年以上だろうといわれる欅の樹です。まさに「まけないタオル」の歌詞のモデルになった大樹と言っていいでしょう。
 そして、その大樹の写真を撮って、あるところで紹介したところ、その写真が曹洞宗のポスターになりました。曹洞宗では永平寺・總持寺両大本山の禅師様をお迎えして、3月5日に仙台市において東日本大震災物故者一周忌慰霊法要を営みます。そのポスターに流されなかった大樹の写真が採用されたのです。これにも「まけないタオル」の目に見えない力が働いているのかもしれません。
 間もなく大震災より一年を迎えます。誰もが生涯で最も悲しく辛い一年を過ごしてきました。そして大樹のように何とか流されずにここまで来ました。「大樹深根」という言葉があります。深く根を張っている木は大きくなるということです。この一年これ以上にないくらいの悲しみの根を、深く瓦礫の大地に張った私たちです。その根っこには、大震災というあれだけの災難を乗り越えたのだから、もうどんなことにも負けないという心が宿っているはずです。その心で復興に向けて、揺るぎない生き方をすれば、その辺の大樹も驚くほどの大きな実を結ぶことでしょう。樹木にも注目されたりして・・・。
 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1329話】
「色褪せない思いやり」
2024(令和6)年11月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1329話です。 個人的な話で恐縮ですが、11月21日で74歳になりました。古稀と喜寿の中間で、特別な意味はありません。またこのテレホン法話を始めて、今年で37年になります。これも40年にも満たず、特別感はありません。しかし、37年の倍が74年ということに気づきました。つまり我が半生はテレホン法話と共にあったということです。袈裟を... [続きを読む]

【1328話】
「お舎利」
2024(令和6)年11月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1328話です。 新米が出ると真っ先に、お寺に持ってこられ「ご本尊のお釈迦さまにお供え下さい」という檀家さんが何人もいます。ほんとうに有り難いことです。そのお下がりをいただく度に、「銀シャリ」を実感します。 シャリは寿司屋の符丁ですし飯のことです。お釈迦さまの遺骨はインドの言葉「シャリーラ」を... [続きを読む]

【1327話】
「祇園精舎の鐘」
2024(令和6)年11月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1327話です。 平安時代の頃、琵琶法師は琵琶を弾きながらお経を読みました。その後、平家物語に曲をつけて語る流れができました。仏教との関りは古いのですが、残念ながらこれまで、琵琶を聴く機会がほとんどありませんでした。 10月27日に徳本寺で行われた「第18回テレホン法話ライブ」で、やっとその心... [続きを読む]