テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1331話】「肘を断つ」 2024(令和6)年12月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1331話です。

 お釈迦さまは菩提樹の下で坐禅を続け、12月8日にお悟りを開かれました。仏教の誕生でもあります。その因縁により、修行道場では12月1日から8日まで坐禅三昧の摂心という修行に入ります。明けて9日には断臂摂心(だんぴせっしん)というこれまた夜中までの坐禅が続きます。

 断臂とは肘を断つということです。何と物騒なと思うでしょうが、こんな話があるのです。今から1500年ほど前、達磨大師がインドから中国に渡り、真の仏法である坐禅の教えを伝えました。とは言っても達磨大師が、みなさんにすぐに受け入れられたわけではありません。諦めずいつの日か正しい仏法を中国に根付かせようと、揚子江を渡り嵩山少林寺(すうざんしょうりんじ)に入ります。洞窟で壁に向かって、ひたすら坐禅に励みます。壁に向かったその後ろ姿は、手も足もないかのように見え、みなさんご存じの達磨さんの姿に重なるわけです。

 さて、達磨大師が少林寺に入った翌年の12月9日のこと。その日はあいにくの大雪でした。神光(しんこう)という修行僧が弟子入りを志願して、達磨大師を訪ねます。しかし何としても入門を許されません。降りしきる雪の中、寒さに堪えながら外で立ち尽くしました。「道を求めるのに容易(たやすい)いことはないのだ。これしきの事で挫けるものか」と、自分を奮い立たせました。そして、夜が明けた時、神光は渾身の力で決意の程を示すのです。右手の刀で左腕の肘を切り落とし、達磨大師の下に差し出したのです。それを見て、達磨大師は神光の弟子入りを許しました。

 達磨大師は面壁九年と言われるように、長いこと壁に向かって坐禅を修行しました。神光もおそばに仕えて、その教えを会得して、達磨大師より跡を継ぐべくお袈裟を授けていただきました。達磨大師はお釈迦さまの弟子としては28代目ですが、中国では初代の祖師です。その弟子神光は二祖となり太祖慧可と称されています。達磨大師亡き後、太祖慧可は30年以上も中国で教化を続け、禅の教えを広められました。

 断臂摂心は太祖慧可の命を懸けた仏道を求める心意気を、万分の一でも感じ取る時です。太祖慧可の言葉に「了了として常に知る」があります。了了とは了解の了と書き、明らかではっきりした様を言います。どんな時も迷いや煩悩が消えてなくなり、ほんとうに大切なものが何であるかがはっきりわかりましたということでしょう。坐禅をすると清々しい気持ちになります。宇宙とひとつになった気分で、日ごろの不平不満や自分をよく見せようという驕りが何とちっぽけかを実感します。私たちはを断つほどの覚悟はできなくとも、肩張らない生き方を心がけることは大事です。

 ここでお知らせいたします。11月のカンボジアエコー募金は、749回×3円で2,247円でした。ありがとうございました。
それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。 

 

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