テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1307話】「揺らがず大遠忌」 2024(令和6)年4月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。

 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。

 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗には本山が2つあります。福井県の永平寺と横浜の總持寺です。元々總持寺は輪島市の門前町(まち)に、今から703年前の1321年に、瑩山禅師が開かれました。その後、明治31年(1898)に大火でほとんどの伽藍を焼失。それを機に明治44年、新しい時代の発展を願って、現在の横浜に移転しました。そして能登の總持寺は別院という位置づけで、總持寺祖院と称され、往時の姿に再建されました。

 聖地なる由縁は、永平寺を開かれた道元禅師の時代は、まだ曹洞宗という名称は用いられていません。瑩山禅師が後醍醐天皇から「日本曹洞宗出世第一道場」の綸旨(りんじ)をいただき、以来曹洞宗の中心道場となりました。それというのも、瑩山禅師は能登に良港があることから、海上交通を利用して、曹洞宗の教えを全国に発信したのです。

 その元になったのは、本山の住職が短期間に交替し、寺院の発展・護持に努める「輪住制」です。多くのすぐれた僧侶に活躍の場を与える機会にもなりました。全国の僧侶が住職に指名されると、おつきの僧侶をはじめ、本山を維持するのに必要な人材、物資等と共に、船で本山に上りました。こうして、總持寺が横浜に移転するまでの570年余りにわたって、曹洞宗の教えは、能登より発展していきました。同時に能登は全国との交易が盛んになり、輪島塗などの文化も全国に広まったのです。

 さて、亡くなってから50年毎に、宗派を開かれた祖師などの功績を偲んで行う法要を遠忌と言います。そして瑩山禅師は、今年700回大遠忌に当たります。曹洞宗では全国を挙げて4月1日から21日まで、大本山總持寺で法要を営みます。よりによって50年に一度というときに、能登半島地震をどう受け止めたらいいのでしょう。

 瑩山禅師のお墓である祖廟・伝燈院は能登の總持寺祖院にあります。祖院では平成19年の地震でも甚大な被害があり、3年前に復興したばかりでした。この度も前回にも増して、大きな被害を受けました。しかし伝燈院は明治の大火でも、平成・令和の地震でも難を逃れました。瑩山禅師曰く「無常を観ずることを忘るべからず。是れ探道の心を励ますなり」。探道とは道を探すと書きます。無常なる自然は常に揺らいでいます。そのことを忘れずに心を励まし修行に打ち込むべしということでしょう。どんなことがあっても坐禅修行する時のように動じない大切さを伝燈院は訴えています。私たちは700年の教えの燈を受け伝えていかなければなりません。それは能登半島復興への道でもあります。
 
 ここでお知らせいたします。3月のカンボジアエコー募金は、1,136回×3円で3,408円でした。ありがとうございました。それでは又、4月21日よりお耳にかかりましょう。

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