テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1302話】「奇跡の救出」 2024(令和6)年2月21日~29日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1302話です。
1年ほど前の昨年2月6日に、トルコ南部とシリア北部で大地震が発生しました。1回目は午前4時17分にマグニチュード7.8で、2回目は同じ日の午後1時24分にマグニチュード7.5の地震でした。両国の死者は4万1千人を超えました。そのような中で、日本の救助隊が派遣されているトルコの現場で6歳の女の子が救出されました。日本の医師の診察で無事が確認されたのです。何と地震発生から130時間後の救出でした。現場では拍手が沸いたそうです。
その後も地震現場では、10日も過ぎてからも、248時間後に17歳の女性、258時間後に48歳の女性、260時間後には12歳の少年が救出されています。大災害などに遭った場合、「発生後72時間」が経つと、生存率が急低下するといわれています。たとえ無事な身体であっても、瓦礫の下敷きとなり、全く外部との連絡が途絶えて、3日間を耐え忍ぶのは至難なことです。昼の間は捜索隊が来るかもしれないと希望を持てたとしても、夜になれば不安と絶望にさいなまれます。そんなことを1週間も10日間も絶えられたのは、ほんとうに奇跡としか言いようがありません。
さて、1月1日に発生した能登半島地震でも奇跡はありました。石川県珠洲市で発生後124時間後の6日の夜、4時間がかりで救出された女性は93歳でした。自宅の1階部分が崩れ、左足首が梁と畳に挟まれて身動きが取れない状態でした。救出されたときは、はっきりと受け答えができたそうです。発生後の救出活動は、雨やひょうで一時中断するなど、難航していました。93歳の女性は、崩れた家の中で寒さ痛さ不安をどのようにして耐えたのでしょうか。
失礼ながら年齢を考えれば、肉体的な限界はとうに超えていたと思われます。奇跡を呼んだのは強い心の支え、たとえば家族であったり、あるいは信仰心かもしれません。普段から何かを信じるという生き方をしていれば、少々のことには動じない胆力が具わるはずです。助かると信じ絶望せず諦めない気持ちです。敢えて、キリスト教の修道士の言葉を紹介します。「信仰は、困難と病気を治すのではなく、それを乗り越える力を与えてくれる」
93歳の女性は残念ながら、救出から約1カ月後の今月8日病院で亡くなられました。左足の切断手術も考えられたのですが、高齢のため見送られたということです。その息子さんはこう言っています。「救出後、会話もでき、布団の上で最期を迎えられたのは救いだった。救出してくれた方には感謝の気持ちです」
地震と言う無常なる出来事の中で、無常を生き抜いた人間の命の計り知れない底力に胸打たれます。「死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ」チャップリンの言葉です。
それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう
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