テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1288話】「手拭いと日本刀」 2023(令和5)年10月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1288話です。

 その昔、知り合いのお宅に泊めていただいた時のこと。風呂上がりに濡れた手拭いの水を切るつもりで、バサッバサッと振っていたら、当主に叱られました。その音は刀で首を切るときの音に似ているので、家ではしないよう代々教えられてきたというのです。なるほどと反省しました。

 その後、無著成恭さんの講演を聴く機会がありました。無著さんは今年7月、97歳で亡くなりました。やまびこ学校の先生としても有名ですし、ラジオの「全国子ども電話相談室」の名回答者としてもおなじみでした。歴とした曹洞宗の僧侶です。大分県の名刹泉福寺の住職などを歴任しました。その講演会は無著さんがまだ若い頃のことで、住職というよりは教育者としての雰囲気が漂っていました。上着は着ないでシャツ姿でした。山形県出身の独特の語り口で、ユニークなたとえ話や実話の紹介は、とても興味深いものでした。

 ひとつ気になったのは腰に下げている手拭いでした。失礼ながら、いかにもダサイといという感じです。しかし、講演を聴きダサイのは私の方であると気づきました。「腰に下げた手ぬぐいはハンカチに代わるものだが、汗かきの私には、ハンカチは半分の価値しかない『半価値』だ」などと笑わせながら、次のように言いました。「腰に下げている手拭いは、日本刀のつもりです。武士であった先祖から伝わる家訓に曰く。腰に差してある日本刀は人を切るためではない。自分の魂がヘソから上にあがってこないように、臍下丹田(せいかたんでん)におさえておくためだ。腰から日本刀をはずしたら、日本人の魂はおさえがきかなくなり、肚(はら)から胸、胸から頭、頭からトサカへとのぼってしまい、思わぬ失態をしでかすことになろう。どうしても、腰から日本刀をとれというなら、かわりに日本手拭いくらいは差しておけ」

 戦前から昭和20年代までは、誰でも腰に手拭いを差していて、恥ずかしくなかった。腰に手拭いの日本人がいなくなって、心コロコロと移ろいやすい軽薄な風潮がはびこるようになってきた。つまり心をしっかり押さえておく頑固なまでに動かない魂がなくなってしまったと言うのです。魂は信念と置き換えてもいいとも言っています。

 最近の出来事で言えば、某政治家は洋上風力発電業者に有利になる国会質問をして、7千万円を超える賄賂を受け取っていました。挙句にその金は、馬主として馬につぎ込んだというのですから、まさに「馬鹿」としか言いようのない、馬に魂を蹴っ飛ばされたようなものです。

 さて、無著さんは生前「私が死んだら、地獄に行くのよ。そこが次の布教所で、地獄に来る人を極楽に送る仕事が待っているからね」と言っていました。無著さんは地獄で今頃、魂のない生き方で悪を重ねた者を、日本刀に見立てた手拭いで、バサッバサッと一刀両断して、心を改めさせているでしょうか。

 それでは又、10月11日よりお耳にかかりましょう。

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