テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1281話】「仕方はある」 2023(令和5)年7月21日~31日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1281話です。
学校は夏休みになりました。家族揃って温泉宿に泊まりに行くという楽しい計画もあるかもしれません。しかし、宿という字がついても、「宿題」となると、子どもたちにとっては、苦痛以外の何物でもありません。
最初に宿題を片付けて、残りをのんびりするか、最初に楽しんでギリギリになって宿題と格闘するか、ふたつのタイプがあります。ほんとうの優等生は、毎日コツコツと励む子どもでしょうか。普通は今日できなくても明日がある、明日やればいい。そう思って、あっという間に3日が過ぎ1週間が過ぎてしまいます。そして長いと思っていた夏休みも終わり、早や秋の風が吹き始めるわけです。
大人になっても夏休みの癖が抜けないで、人生を送っていることはないでしょうか。お釈迦さまの教えに「四馬(しめ)のたとえ」というのがあります。四馬とは4頭の馬のことで、無常の観じ方を馬の賢さにたとえたものです。1番の駿馬は、御者が振り上げた鞭の影を見て走り出す、つまり別の村人の死に接しても無常を思う、2番目は鞭が毛の先に触ってから走り出す、つまり同じ村人の死に接した時、無常を思う、3番目は肉に触ってから走り出す、つまり家族などの死に接して悲しむ時です、4番目は骨身に徹しないと走り出さないというのは、自分が病気になり死が迫って初めて無常を感じる者のたとえです。
子どもの頃描いた夢や希望も、大人になるにつけ、自分の能力や置かれた状況を悟り、どうせこんな自分だから仕方がないと思ったことはありませんか。言い訳をして宿題を先延ばしにしているうちに夏休みが終わってしまうようなものです。無常に一番鈍感になっている状態です。無常に鈍感とは、言い訳人生です。まだ明日がある、今日は暑いから何もしたくないなど、できない理由はいくらでも並べられます。御者の鞭の存在すら見えていません。
〈「仕方がない」と言い訳せず、「仕方はある」と工夫する〉これは2010年の甲子園で春夏連覇を果たして、沖縄県勢初の夏の甲子園優勝を成し遂げた興南高校の我喜屋優監督の言葉です。監督は「小さいことを見ようとしない人には、見落としがいっぱいある。小さいことに気づける人は、大きな仕事ができる」とも言っています。そして甲子園の宿舎の周りのごみ拾いをした話は有名です。仕方がないと思い込んだ時点で、どんな仕方も見えなくなります。先ずは今の自分も、置かれた状況も否定しないことです。そうすることで仕方が見えてくることがあります。鞭の影が常に見えると、今自分は何をしなければならないかが分かるようになります。私たちの人生には宿題というより、宿願があるのです。それは仏に成ることです。仏とは工夫に工夫を重ね、今この時を生き切っている人のことを言います。
それでは又、8月1日よりお耳にかかりましょう。
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