テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1237話】「伸びしろ」 2022(令和4)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1237話です。

 「伸びしろ」という言葉は、いつごろから使われるようになったのでしょうか。手元の辞書には載っていません。「糊代」をもじったような気がしますが、平成の時代の半ばごろからスポーツ界で使われていたという説もあります。

 そのスポーツ界でとんでもない伸びしろを見せつけた選手がいます。プロ野球ロッテの佐々木朗希投手です。4月10日オリックスを相手に走者を1人も出さない完全試合を成し遂げました。28年ぶり16人目の快挙です。まだ20歳という最年少記録でもあります。13連続三振のプロ野球新記録や1試合19奪三振のタイ記録という堂々たる内容です。

 更には、1週間後の日本ハム戦でも、あわや2試合連続完全試合かという8回までパーフェクトに抑えました。しかし0対0のまま9回は投げることはありませんでした。これに対しては賛否両論がありました。「せめてもう1回投げて欲しかった。幻の完全試合となったのは残念」「佐々木投手の体のことを考えると降板は仕方ない。監督の判断は英断だ」。

 佐々木投手が投げないということに関しては、彼が高校3年の夏にもあり、波紋を呼びました。高校野球史上最速の163㌔を投げた彼は、岩手県立大船渡高校のエースでした。甲子園を懸けた決勝では1球も投げることなく、チームは敗退し代表の座を逃しました。前日129球を投げて完封しています。県予選での総投球数は435で、失点はわずか2という成績。佐々木投手の力に頼らざるを得ないチームなのに、登板させなかった監督の判断は、容易には理解されませんでした。佐々木投手は「投げたい気持ちはあった」と言っていました。当時の国保(こくぼ)監督は「投げさせることはできたが、故障を防ぐためにさせなかった。高校生活で一番壊れる可能性が高いのが今だと判断した」と語りました。

 ロッテに入団してからも佐々木投手は、チームの育成プランにより、1年目は公式戦に1度も登板せず、160㌔台の投球に耐えうる体づくりに専念していました。連続完全試合や甲子園という目先の偉業にとらわれない2人の監督の英断は、佐々木投手の将来をしっかり見据えているからです。

 お釈迦さまの教えは、対機説法と言われます。それぞれの心の状態に応じて、適切な教えを示されました。すべては仏という完全なる姿、いわゆる成仏を目指して欲しいからです。佐々木投手の投球能力は人間の限界に近いものでしょう。それを長く発揮するためにはそれなりの体づくりの必要性を、監督は熟知していたのでしょう。目の前の成果を求めるあまり、僅かばかりの糊代に、半端な糊を付けてそそくさと形を作ってしまうような育て方をしなかったのです。我々の想像を超えた佐々木投手の伸びしろを見極めていたのです。その上での完全試合は、ある意味、成仏とは言えないでしょうか。

 それでは又、5月11日よりお耳にかかりましょう。

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