テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1212話】「ヒマワリ」 2021(令和3)年8月21日~31日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1212話です。

 昔のこと、田植え前の田んぼ一面にレンゲの花が咲いていたのを覚えています。米が実ったり花が咲いたり、田んぼはすごいと思ったものでした。しかし、あれは自然発生のレンゲではなく、栽培していたものだったのです。いわゆる「緑肥」です。植えた植物を肥料として土壌に入れたまま耕すものです。

 その緑肥としてヒマワリが人気を集めています。山元町では東日本大震災で沿岸部が災害危険区域になってしまいました。人々は新天地での生活を余儀なくされました。昔の宅地跡や農地は集約整備されて広大な農地になりました。地元の農業生産法人がそこを管理して、タマネギなどを生産しています。その農地の肥料としてヒマワリを植えているのです。

 4年前から、毎年場所を代えて広大なヒマワリ畑を一般公開しています。今年は震災遺構の中浜小学校の北側です。近くにある震災慰霊塔の日本最大級古代五輪塔の「千年塔」や全国から寄せられた黄色いハンカチがはためくポールも望めます。東京ドームの約1.5倍の4.7ヘクタールの広さに、約170万本のヒマワリが咲き誇っています。一面黄色のヒマワリ畑と震災遺構や慰霊塔の風景は、如実に復興を物語っています。

 もっとも、ヒマワリ畑になっているところは、10年前は普通に人々が生活していた中浜地区という集落です。海から数百メートルですので、全ての家屋は流されました。犠牲者も百人を超え町内でも一番多い地区です。初めて中浜地区を訪れてヒマワリ畑を見た人は、それだけで十分に感動するでしょう。一方昔を知る人は、その変わりように複雑な思いを抱くかもしれません。また10年かけてここまで来たぞと感慨深げに過ぎし日を思う人もいるでしょう。

 それやこれやの思いを抱きつつも、ヒマワリ畑を見渡せば、活力が湧きます。ヒマワリはその花を見ただけで、ワクワクします。「百万本のバラ」以上の数は、圧倒的な迫力があります。どんな言葉よりも、復興を示す説得力があります。そして緑肥の効果というのは、地力(ちりょく)を与えるだけでなく、保水力を高めたり、塩類障害を防止します。更には、害虫の発生を抑制したり、作物の病気の低減も望めるそうです。ヒマワリを見ていれば、私たちの心にも、良い肥料が蓄えられるかもしれません。相手を思いやる包容力を高めたり、けがや病気の障害を克服する精神力を養ったり、怠け心を省みる地力(じりき)が付くなどの効果です。

 今年のお盆は雨にたたられ一度も太陽を拝むことができませんでした。しかし、ヒマワリは元気に咲いています。日々災害や「過去最多」の感染者数が報じられ、滅入ってしまいます。せめて「今日咲いた」ヒマワリを見て、明日へのエネルギーを培い前に進みましょう。イッチニ・イッチニ、今回の法話は1212話でした。

 それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。


ヒマワリ畑と震災遺構の中浜小学校

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