テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1208話】「観音さまの写経」 2021(令和3)年7月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1208話です。

 「ろくまんくせんさんぱっし」法華経全巻の総文字数の覚え方です。漢文で69,384文字あります。28品つまり28章から成り立っています。お釈迦さま滅後500年頃に、その教えを元に編纂された膨大なお経です。その内容はお釈迦さまの大慈悲心で苦しんでいる人を救い幸せをもたらすというものです。

 今全世界がコロナ禍で苦しんでいます。東京の相川孝子さんは、コロナワクチンの2回の接種を終えて、7月の雨の日徳本寺にお出でになりました。写経なさった法華経全巻を納経するためです。写経の最後には「為 新型コロナウイルス感染終息 令和3年5月吉日 東京都板橋区相川孝子 謹書」と力強い筆跡で記されていました。7万字に及ぶ経文は、写経用紙で206枚にもなります。1枚写経するのに約1時間から1時間半かかるそうです。今年1月30日から始められた大精進です。

 実は平成25年8月に相川さんは、津波で流された徳泉寺復興の「はがき一文字写経」のことを、新聞で知り写経を送って下さいました。その後もお彼岸などの節目に写経を送り続けてくださいました。それは復興が成し遂げられるまで続き、とうとう120枚の「はがき一文字写経」になりました。全国47都道府県すべての方から、2千枚を超える写経をいただきましたが、お一人で120枚は破格です。

 遅々として復興が進まず、心が折れそうな時、相川さんから送られて来る「はがき一文字写経」にどれだけ励まされたかわかりません。こうして見守ってくれる方がいるのだからと、心を奮い立たせてきました。その相川さんがなさった法華経全巻の写経です。霊験あらたかと思わずにはいられません。尊い写経をお供えして、私も改めてコロナ終息祈願のお勤めを致しました。

 さて、法華経の霊験にまつわる物語があります。曹洞宗を開かれた道元は、1223年真の仏法を求めて中国に渡ります。4年半後正伝の仏法を会得して帰途に就きます。当然船旅です。天候まかせ運まかせの命がけの航海です。大海に出て数日後すさまじい暴風雨に襲われました。船内は大混乱となりました。しかし、道元は泰然自若として坐禅の姿です。そしてこの時唱えたお経が、法華経第25の「観世音菩薩普門品」です。その一節にはこうあります。「念彼観音力 波浪不能没」つまり「彼の観音の力を念ずれば、波の中に没することもないだろう」と説きます。かくの如き力を信じて、道元は一心に観音さまを念じたのです。するといつしか嵐も治まり、無事九州の港に着くことができました。

 更に「観音妙智力 能救世間苦―観音さまのすぐれた智慧の力は、よく世間の苦しみを救うだろう」という一節もあります。まさに相川さんの観音さまのような慈悲の心による写経が、震災からの困難を経て、徳泉寺の復興を導きました。コロナという苦難にもきっと終息が訪れると信じています。「ろくまんくせんさんぱっし」億万の人が苦戦しているコロナですが、やがて散発的になり消えてしまいますように・・・。

 ここでお知らせいたします。6月のカンボジアエコー募金は、182回×3円で546円でした。ありがとうございました。それでは又、7月21日よりお耳にかかりましょう。

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