テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1193話】「吾唯足知」 2021(令和3)年2月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1193話です。
「吾唯足知(われ ただ たるを しる)」という4つの漢字には、全て「口」という字が含まれています。穴あき硬貨のように真ん中に「口」を置き、それを囲むように上から右回りに、「吾 唯 足 知」という4文字を配置した粋なデザインを見たことはありませんか。
「足るを知る」とは「少欲知足」というお釈迦さまの教えに通じるものでしょう。お釈迦さまは約2500年前の2月15日に、沙羅双樹の林の中でお亡くなりになりました。その時の最期の説法が『遺教経(ゆいきょうぎょう)』というお経です。そこには「八大人覚(はちだいにんがく)」という修行者が実践すべき8つの徳目が述べられています。その1番目に少欲、2番目に知足が説かれています。
少欲の反対は欲深いです。利得の追及は苦悩の元です。欲に患うことがなければ、少しのことでも満ち足りた気持ちになり、何ら憂いもなく穏やかに過ごせます。しかし、私たちが現実に生きていく限りは、食欲・睡眠欲などの基本的な欲は必要です。様々な欲望実現は人類の発展に寄与してきたところもあります。そこで求められるのが、ブレーキとアクセルの塩梅です。
知足即ち足ることを知れば、苦悩から抜け出せると説きます。知足の人は地面に身を横たえても安楽と思えますが、不知足の人は、天上界の宮殿に住んでも不満を覚えるものです。どんなに裕福であっても、心の貧しさを補うことはできません。「知足の人は貧しといえども、しかも富めり」足りていると知る人は、暮らしは貧しくとも、心は裕福で安楽に過ごせます。
ここで誤解しないで下さい。一般的な生活を営む中で、どんなに貧しくても、辛抱していれば心は豊かに暮らせますよという事ではありません。不自由な生活を強いられても我慢することが美徳ですよという事でもありません。八大人覚とは、あくまで仏道修行者に求められている行です。修行者は生産性がありません。だから、もともとアクセルの必要はなく、ブレーキのみの操作で十分なこともあります。
一方、一般の生活では生産性も求められます。ブレーキを踏むだけでは、生きていけません。アクセルの操作も必要な点では、修行者よりも、心の疲弊は激しいかもしれません。ある人が言いました。「終活することと あなたの成仏とは 無関係です」。最近自分の最期を想定して、いわゆる断捨離などをする終活が盛んです。そこで見えてくるのが「捨てきれない自分」です。これはいらない、これはもう少し取っておこうなどと、我が出てきます。
究極の「少欲知足」は、捨てるという思いさえも捨ててしまうことです。何も持っていないという事をひけらかしてはいけないのです。「吾唯足知」というからには、その4つの口からあらゆる欲を吐き出すことでしょう。2月15日のお釈迦さまの命日を涅槃会といいますが、涅槃とは煩悩の炎が吹き消された状態を表すニルバーナというインドの言葉が語源です。
ここでお知らせいたします。1月のカンボジアエコー募金は、146回×3円で438円でした。ありがとうございました。それでは又、2月21日よりお耳にかかりましょう。
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