テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1143話】「曼殊沙華」 2019(令和元)年9月21日~30日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1143話です。
「死人花(しにびとばな)」「地獄花」「幽霊花」、何とも不吉な花の名前ですが、すべて彼岸花の異名です。根には毒性があるので、昔、土葬された遺体の脇に、モグラ除けで植えられたとも言われます。球根の毒を食べた後は、彼岸つまりあの世に行くしかないから、彼岸花だという説もあるほどです。
いずれにしても、その名の通り秋彼岸に合わせるかのように、突然に葉っぱが出る前に独特の赤い花を咲かせるとは、仏教の伝道師のような花です。事実、彼岸花の曼殊沙華(まんじゅしゃげ)という名前の由来は、仏典に出てくるサンスクリット語の「天界に咲く花」を、音写したものです。
さて、その曼殊沙華は、花は咲いても実はなりません。繁殖は地下茎で行いますので、昆虫に受粉を助けてもらう必要はありません。それなのに、惜しげもなく、花蜜を差し出し、昆虫の役に立っています。自分の身のことだけを考えるのではなく、のびのびと生きていて、他の動物をも養っている、とある生態学者は言います。
それこそが彼岸の心です。彼岸とは彼の岸つまりあっち側の岸、悟りを得た理想の世界のことです。「菩提心を発(おこ)すというは、己(おの)れ未(いま)だ度(わた)らざる前(さき)に一切衆生を度さんと発願し営むなり」。自分より先に、他のすべての人に仏になって欲しいと願い、そのための行動をする人のいる世界です。それに対して、現実の私たちがいる世界は、こっちの岸で此岸(しがん)と言い、迷いや煩悩に満ちています。自分の都合が最優先で、他のことを顧みる余裕のない生活をしている状態を言います。
一年365日ほぼ毎日、自分の利益だけを考えた「我利我利亡者」的な暮らしをしている私たちですが、せめて彼岸の1週間、彼岸に渡るための6つの教えの六波羅蜜(ろくはらみつ)のひとつである「布施」の実践を心がけてみたいものです。布施とは、お金や物を施すだけでなく、打算の心も捨てること。つまり、宮沢賢治のように「アラユルコトヲジブンヲカンジョウニ入レズニ」施すことです。曼殊沙華が自分の繁殖に関わるわけではないのに、花蜜を施しているようにです。
古い川柳に「後の世の 種を彼岸に 蒔きにでる」というのがあります。後の世の種を蒔くとは、彼岸に渡るための行いをするということでもあるでしょう。それは曼殊沙華のように、自分の実はならずとも、見えない土の下で、次の命に恥じない精進をして、命を伝えることなのかもしれません。仏典の曼殊沙華は決して不吉な花ではなく、良いことの前兆を示して、見た者の悪業を払うと言われています。曼殊沙華を眺めながら、日ごろの自分勝手を戒める思いで、心にいつも彼岸花を咲かせられるような種蒔きをしましょう。
それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。
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