テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1138話】「夢でない目標」 2019(令和元)年8月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1138話です。

 「退路を断つ」という言葉があります。逃げ道を作らない、言い訳をしないということでもあるでしょう。そんな思いをした、6月から約2カ月に亘って挑戦した、徳泉寺復興の仕上げとしてのクラウドファンディンでした。インターネットを介しての資金勧募という全く新しい分野に、逃げ道はふさわしくないのです。

 夢物語を語って結果が伴わなくとも、それは夢だからという逃げ道があります。しっかりとした目標を立てれば、何が何でもそこに向かって進むだけです。それでも目標に達しないことはあります。その時は素直に力の及ばなかったことを認め、反省して次なる目標に向かうという姿勢ができます。

 先ずは、どんな目的でどのくらいの資金が必要であるかを、訴えます。ただ支援してくださいでは、誰も見向きはしません。みなさんから共感されるような物語が必要です。津波で流された徳泉寺の復興を「はがき一文字写経」で実現するというのは、夢のようですが、物語を感じさせます。今回の資金勧募は、「はがき一文字写経」の納経いただいた全国の約2000人の方に、恩返しの意味を込めて、震災と復興までの過程をまとめた復興誌を製作し配布するためのものです。総額200万円以上の経費がかかりますが、先ず、150万円という目標額を設定しました。そして、期間は6月3日~7月31日の午後11時までということです。

 ここでのシステムは、ALL or nothing といって、期間内に目標額に1円でも足りない場合は成立せず、ご支援いただいた方にすべて返金して、実行者の手元には何も残りません。ただその期間の努力が水の泡となるだけです。数字は非情ですが、一番分かり易いとも言えます。毎日残り日数と共に、入ってきた支援金額が公開されます。日々、震災当時のことやこれまでの汗と涙のことを、物語のように語り続け、みなさんに関心を寄せていただきました。

 おかげさまで、第一目標は1カ月かからずに達成できました。すると、ネクストゴールと言って、更に目標を増額して、支援の呼びかけができます。いずれにしても後がないという強い気持ちで、目標に向かうだけでした。何とかネクストゴールの200万円も大幅に超えることができました。

 今回のことは、資金勧募が第一の目的ではありましたが、今一度東日本大震災を忘れないでというメッセージも発したかったのです。このクラウドファンディングのサイトに、延べ1600人を超える方がアクセスし、その半数近くが20代から30代の人でした。震災当時はまだ若くて、或いは被災地から遠いところに住んでいて、惨状に対する現実味が感じられない人も多かったかもしれません。私でさえ震災のことが夢だったらと思ったこともありました。この度ご縁をいただいた若者たちが、復興を夢物語に終わらせてはいけないと、これからも伝え続けてほしいと、夢でなく思っています。

 それでは又、8月11日よりお耳にかかりましょう。

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