テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第962話】「しつこく」 2014(平成26)年9月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

962.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第962話です。
 「40・50は洟垂れ小僧。70・80になってやっと一人前の坊さんとして、手を合わせてもらえる」などと言うことを先輩から聞かされたことがありました。確かに檀家さんにとっても、若い小僧さんのお勤めでは、心もとないと思うことがあるかもしれません。それにしても50歳になっても、まだ一人前と認めてもらえないほど、坊さんの世界は奥が深いのでしょうか。坊さんだって年齢に応じて体力は衰えていくのですが・・・。
 さて、スポーツの世界は、体力勝負です。第一線で活躍できる年代はかなり限られてきます。スポーツの種類にもよりますが、10代で世界を極める人はいても、40代50代では現役でいることさえ難しくなります。それなのに、プロ野球の中日の山本昌投手は、9月5日の阪神戦で、今季初登板、初先発でプロ最年長勝利を挙げました。御年49歳0カ月です。これまでの記録は64年前の1950年に阪急の浜崎真二投手が打ち立てた48歳4カ月でした。
 山本投手は、高校卒業後ドラフト5位で中日に入団。4年間は勝利がなく、5年目に初勝利。現役31年間での通算勝利は219勝になりました。それでもここ数年は故障などで、2度引退を申し出たそうですが、チームの顔としても十分に「戦力」になるという評価をいただき、慰留されます。それからは、ボールを投げられる限りは現役を続けるという一途な思いを持ち続けたのでしょう。それを裏付けるのは、練習量です。投手練習が休みの時でも、必ず走って体を作っているといいます。その投球スタイルは、「一生懸命投げる、しつこく投げる、諦めずに投げる」ということだそうです。
 「一生懸命」と「諦めない」の間にある「しつこく」というのが、いかにも49歳の人の言葉に聞こえます。「執念深い」というような意味合いが強く、あまり好い印象は与えないかもしれません。しかし、はたから見たら、そこまでやるのかと呆れられるくらいのことをやっていなければ、人並み外れた記録は残せないでしょう。「一生懸命」と「諦めない」は、誰でも口にしますが、形勢が悪くなると、「一生懸命やったのに」という愚痴につながり、あっという間に諦めの気持ちが働きます。
 ところが、好い状態では勿論、悪い状態になっても自分の決めたことをやりとうせる、それがしつこい人です。そんな人は「執念深い」のではなく、揺るぎない深い信念を持った「信念深い」人と言えます。そして、坊さんでは「洟垂れ小僧」を卒業できるのは、しつこく煩悩に悩まされることなく、煩悩から「放たれた」ときかもしれません。死ぬまでに卒業できるでしょうか。
 ここでご報告致します。8月のカンボジア・エコー募金は、70回×3円で210円でした。ありがとうございました。
 それでは又、9月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1329話】
「色褪せない思いやり」
2024(令和6)年11月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1329話です。 個人的な話で恐縮ですが、11月21日で74歳になりました。古稀と喜寿の中間で、特別な意味はありません。またこのテレホン法話を始めて、今年で37年になります。これも40年にも満たず、特別感はありません。しかし、37年の倍が74年ということに気づきました。つまり我が半生はテレホン法話と共にあったということです。袈裟を... [続きを読む]

【1328話】
「お舎利」
2024(令和6)年11月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1328話です。 新米が出ると真っ先に、お寺に持ってこられ「ご本尊のお釈迦さまにお供え下さい」という檀家さんが何人もいます。ほんとうに有り難いことです。そのお下がりをいただく度に、「銀シャリ」を実感します。 シャリは寿司屋の符丁ですし飯のことです。お釈迦さまの遺骨はインドの言葉「シャリーラ」を... [続きを読む]

【1327話】
「祇園精舎の鐘」
2024(令和6)年11月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1327話です。 平安時代の頃、琵琶法師は琵琶を弾きながらお経を読みました。その後、平家物語に曲をつけて語る流れができました。仏教との関りは古いのですが、残念ながらこれまで、琵琶を聴く機会がほとんどありませんでした。 10月27日に徳本寺で行われた「第18回テレホン法話ライブ」で、やっとその心... [続きを読む]