テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第937話】「ずぼら」 2014(平成26)年1月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

937_1.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第937話です。
 あけましておめでとうございます。
 どなたさまも、新たな気持ちでお正月を迎えられたことでしょう。今年こそはと思うことの一つに、どうしても東日本大震災からの復興を挙げなければなりません。今年の3月で丸3年を過ごすことになります。「石の上にも3年」の言葉通りに、何らかの報われた結果が出なければ、被災地ではいつまでもずるずると、耐え忍ぶ生活を強いられることになります。被災地以外では、3年という区切りのいい数字につられて、「震災のことはもういいだろう」という雰囲気にならないか、心配です。
 復興が目に見えて進まない原因は、被災地・被災者それぞれによって、様々なことが考えられるでしょう。個々の対応については、ひとまず置くとして、リーダーが心意気を示さなければ、復興が上げ潮に乗ることはありません。この3年間、その時々の日本のリーダーは、復興に関しては、ややずぼらな印象を受けました。決めなくてもいいような特別秘密保護法を即決した勢いから比べたら、尚のことです。その勢いを復興関連のことに向けて欲しいものです。
 ところで、「ずぼら」とは、ご存じのように「するべきことをちゃんとしないこと」を言います。その語源は、「坊主(ぼうず)」をひっくり返した「主坊(ずぼう)」にあるというから驚きです。昔、修行を忘れて遊んでばかりいた坊さんたちを、軽蔑を込めて「ずぼう等」と呼んだそうです。やがて「ずぼら」になって、坊さん以外の人でも、いい加減な人を「ずぼらな奴」などというようになりました。
 私は徳本寺・徳泉寺の住職を勤めています。ある意味、2ヵ寺のリーダーです。どちらの寺も甚大な被害があり、復興に取り組まなくてはならない状況です。これまでも、それなりに尽力してきたつもりですが、まだまだ思ったような結果を出すまでには至っていません。決して、ずぼらを決め込んでいたわけではないのですが、あまりに厳しい現実があります。
 徳本寺は津波で壊滅状態になった中浜墓地の移転、徳泉寺は流された本堂等の伽藍の復興。どちらも檀家さんも被災しているので、その協力を得ることは困難です。それでも、3年も経って復興の兆しが見えなければ、ほんとうに「ずぼらな和尚だ」と言われかねません。今年こそはリーダーとして心意気を示し、先ず、中浜墓地は春頃までに移転造成を完成させます。徳泉寺は境内が災害危険区域になっているため、境内地の移転も視野に入れつつ、伽藍復興を進めます。今年の干支の馬にあやかり、復興へ馬力アップです。みなさまも被災地へのバックアップをよろしくお願い申し上げます。ずぼらな復興で終わらないためにも・・・。
 それでは又、1月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1339話】
「旦過寮」
2025(令和7)年3月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1339話です。 正月元旦の「旦」という字は「あした」とも読み、日の出の頃をいいます。禅宗の道場には旦(あした)に過ぎると書く「旦過寮(たんがりょう)」という寮があります。夕べに来て早朝に去る、つまり行脚僧が寺に一夜泊まるところです。転じて、修行僧が正式に入堂する前に何日か滞在するところも指します。 旦過寮は寺に入ることは許され... [続きを読む]

【第1338話】
「本来の家族葬」
2025(令和7)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1338話です。 「家族とは『ある』ものではなく、手をかけて『育む』ものです」8年前105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんの言葉です。家族なんて日常生活では、当たり前に「ある」ものだと思ってしまいます。家族の一員を亡くした時、つまり「ある」ものがなくなったとき、どのように対応... [続きを読む]

【第1337話】
「涅槃寂聴」
2025(令和7)年2月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1337話です。 「言っていることは聞こえていて、うなずくが、しゃべることはほとんどできない。目を開けるのも辛そうだった」。2021年11月9日に99歳で亡くなられた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの病床での様子。最期まで看取った秘書の瀬尾まなほさんが伝えたものです。 死の1カ月ほど前に、一時退院し... [続きを読む]