テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第900話】「予言」 2012(平成24)年12月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

900.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第900話です。
 その昔、1999年7月に人類が滅亡するという「ノストラダムスの大予言」なるものがありました。幸いなにごともなく、今日まで来ています。ですが、もう一つ人類滅亡の予言があるそうです。しかもその日は今年2012年12月21日というのです。その根拠は、古代中米で栄えたマヤ文明の暦が、2012年12月21-23日で終わっているからといいます。マヤ文明は非常に精度の高い天文観測を行い、数学的概念が発達していたことで知られているから真実味を帯びているとの新聞報道がありました。
 さて、この度の東日本大震災の発生を予言した人はいたのでしょうか。想定外という言葉で形容されたように、予想も予言もされていなかったでしょう。歴史上、同規模の震災や津波は日本でも外国でも発生していたはずです。ただ自分のところでは起きない、起きて欲しくないという思いがあるかぎり、いくら予想や予言があっても我がことにはなりにくいものです。
 震災で我が山元町のある集落は、何百軒もの家屋があっという間に津波で流されたり、百人を超える人の命が奪われました。その現実を見たとき、人類が滅びるときはこんな状況になるのだろうかと、俄かに人類滅亡が我がことになりました。その地域は、宇宙全体から見れば、その存在を確認すらできないほどです。でもそこには確かに命が存在していたのです。人の命、動物の命、植物の命、思い出の品々も命といっていいかもしれません。それらがすっかり失われ、しかもまた元のように、そこに戻って暮らすことができない災害危険区域となれば、人類滅亡の縮図を見るかのようです。
 しかし、津波でどれほどの被害があろうとも、大予言でも当たらなかったように、滅亡するような人類ではありません。女優杏さんの言葉に「向いている方が前 進んだところが道になる」というのがあります。誰も後ろを向いて滅亡を目指して歩く人はいません。方向はそれぞれかもしれませんが、私たちが今進んでいる方が前だと信じて歩いています。地図から消えた道もありますが、自分の時代に新しい道を造るのだ、そんな気概を持てるようになってきています。復興工事のため、県外ナンバーも含めて、連日渋滞ができるほどダンプカーが行き交っています。特産のいちご栽培も始まりました。人類滅亡ならぬ故郷を復興させる人類熱望されています。
 さて、今回は今年最後のテレホン法話でしたが、ちょうど区切りのよい900話目でした。月3回の更新で丸25年の結果です。始めたときは、こんなに続くとは、誰も予想も予言もしていません。一話一話、できることをやろうという思いでお話してきました。そして常に次の一話ということを目指して、前を向いて今日まできました。復興とて同じです。あの日以前に戻れないことを受け容れ、一人ひとりができることをやるしかありません。できるのにやらなければ復興できないと、私は予言します。
 それでは又、来年1月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1339話】
「旦過寮」
2025(令和7)年3月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1339話です。 正月元旦の「旦」という字は「あした」とも読み、日の出の頃をいいます。禅宗の道場には旦(あした)に過ぎると書く「旦過寮(たんがりょう)」という寮があります。夕べに来て早朝に去る、つまり行脚僧が寺に一夜泊まるところです。転じて、修行僧が正式に入堂する前に何日か滞在するところも指します。 旦過寮は寺に入ることは許され... [続きを読む]

【第1338話】
「本来の家族葬」
2025(令和7)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1338話です。 「家族とは『ある』ものではなく、手をかけて『育む』ものです」8年前105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんの言葉です。家族なんて日常生活では、当たり前に「ある」ものだと思ってしまいます。家族の一員を亡くした時、つまり「ある」ものがなくなったとき、どのように対応... [続きを読む]

【第1337話】
「涅槃寂聴」
2025(令和7)年2月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1337話です。 「言っていることは聞こえていて、うなずくが、しゃべることはほとんどできない。目を開けるのも辛そうだった」。2021年11月9日に99歳で亡くなられた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの病床での様子。最期まで看取った秘書の瀬尾まなほさんが伝えたものです。 死の1カ月ほど前に、一時退院し... [続きを読む]