テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第882話】「回向」 2012(平成24)年6月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

20120621_1.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第882話です。
 思い起こせば震災から2週間過ぎた昨年の3月25日に、ベトナム出身の僧侶ビックさんが、徳本寺にやって来て、2晩泊って行きました。津波に襲われた沿岸部で慰霊の旅を続けていると言います。津波が起きると、世界中どこまでも行って、祈りを捧げるのだそうです。まだ瓦礫が散乱している中を、裸足で海岸まで行って祈って来るのでした。以来数え切れない人が、徳本寺を、被災現場を訪れ、祈りを捧げたことでしょう。
 震災から463日になる6月15日にも、長野県の松本仏教和合会の僧侶11名が、慰霊法要に訪れて下さいました。松本市の宗派を超えた仏教寺院の会です。長年托鉢や花まつり等の仏教行事を行っています。先ず徳本寺の本堂で、復興祈願のお経をお勤めいただきました。その後、お預かりしている多数の震災犠牲者の遺骨の前で、慰霊法要を修行し、お焼香を賜わりました。更には、もう一つの住職地である同じ町内の徳泉寺でも法要が営まれました。ここは本堂等の伽藍から仏具まですべて津波で流されてしまいましたので、本堂跡地に立って、外でのお勤めでした。
 「遠くにいる私たちは、やっと被災地を訪れることができても、具体的に何も手助けはできません。ただこうして祈るだけです」導師をお勤めになった住職様はそう仰いました。しかし、それが尊いことなのではないでしょうか。機械やロボットの働きは、眼に見えてその成果も分かりやすいものがあります。でも、人間のように祈ることはできません。
 松本仏教和合会の方々は、法要の最後に普回向(ふえこう)というお経を称え、まさに祈られました。「願わくは此の功徳を以て普く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜんことを」。回向とは、自分の積んだ功徳を、他のためにめぐらし、ふり向けることを言います。普回向には「普く一切に及ぼし」とあるように、この世のすべてのものに功徳が及んで欲しいという願いが込められています。お経を称える、祈るということが功徳であり、それがめぐらされて、すべてのものが仏の心を抱けるようにということです。慰霊をする功徳が亡き人にもめぐらされて、安らであって欲しいということでもあるでしょう。
 回向という言葉の原語は「パリナーマナー」で、「変化する」「成長する」という動詞から作られたもので、他を宗教的に成熟させる、果報を実らせるという意味で用いられたそうです。この被災地が良きに転じて、成長するためにも、復興を願う祈りというまさに回向の力が必要です。はるばる海を越えてやって来た僧侶ビッグの祈り、日々訪れ犠牲者の遺骨の前で手を合わせる方の祈り、青空の下、本堂跡地で捧げた祈り、すべてが回向です。回向は他に向けることですが、やがては自分にも返って来ることになり、皆共に仏道を成ずる、謂わば果報を実らせることができるということです。なるほど日本語で回向と言えば、英語でも「エコー」とこだまのように返ってきそうで、世界中、普く一切に及ぶ気がします。
 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

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