テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第807話】「東司(とうす) 2010(平成22)年5月21日-31日

20100520s.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第807話です。
 「横浜」「カセットテープ」は、どちらもある言葉の別名ですが、お解りでしょうか。答は「トイレ」です。「横浜」は市外局番が「045」で、「オシッコ」と読めるからだそうです。「カセットテープ」は「録音する・音を入れる」ということで「おトイレ」となります。また外国ではトイレに行くことを「薔薇を摘みに行く」というそうです。ことほど左様に、トイレは別名や隠語の多さで知られています。
 そして、禅寺ではトイレを「東司(とうす)」と呼んでいます。「東に司る」と書きます。禅寺の七堂伽藍の一つです。禅寺では法堂(はっとう)・仏殿(ぶつでん)・山門(さんもん)・庫院(くいん)・僧堂(そうどう)・浴室(よくしつ)・東司という七つのお堂が配置されています。どうして東司というかについては、諸説がありますが、東側に建てられることが多かったからという一説があります。いずれにしても、七堂伽藍に数えられるほど東司は重要な場所であるわけです。食事をする、風呂に入る、用を足す、すべてが修行の一環と捉えています。
 一般生活においてもトイレはなくてはならない大事なところです。しかし「ご不浄」などという別名が示すように、いかにも汚い処と見られがちです。確かに我々の排泄物がお世話になる処ですから、それなりに見られても仕方がありません。逆に、どこよりも汚れやすいところであるが故に、いつも清潔にしておこうという心掛けが求められるところでもあります。ご飯を食べるとき、テーブルが汚れていたら、どんなに美味しい料理でも、味は半減するでしょう。同じように汚いトイレでは、気持ちよく用を足せないものです。どちらも生きる上で毎日向き合うところです。
 そういうわけで、徳本寺においても、この度トイレの改修工事を行いました。数も増やし、広さもある程度確保しました。何より、「またあのトイレに入ってみたい」と思われるような造りにしてみました。便器は洋式ですが、他の造作は純和風です。木材をふんだんに使ってもらいました。木の香りがとてもさわやです。また、東司の守護神である烏芻沙魔明王(うすさまみょうおう)が祀られています。あらゆる不浄を焼き除き清浄にして下さる力を備えていらっしゃいます。憚(はばか)りながら、徳本寺のトイレで用を足せば、身も心も清らかになることでしょう。おっと、「憚り」もトイレの別名でしたね。
 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1342話】
「無憂樹」
2025(令和7)年4月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1342話です。 お釈迦さまが生まれたところにあった木は、無憂樹。悟りを開いた所にあった木は、菩提樹。亡くなった所にあった木は、沙羅双樹。これを三大聖樹と言います。無憂樹はインドでは、字の如く憂いの無い木ということで、乙女の恋心を叶えるなど、幸福の木とされます。 さて、4月8日はお釈迦さまがお生まれになった降誕会です。父は釈迦族... [続きを読む]

【第1341話】
「復興というコマーシャル」
2025(令和7)年3月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1341話です。 今年1月フジテレビは不祥事により、番組のスポンサーに続々撤退されました。そのようなテレビで企業や商品を売り込むのは、イメージダウンになるという判断からです。空いた枠はACジャパン公共広告機構のコマーシャルで穴埋めをしました。 ACジャパンといえば、東日本大震災の時を思い出しま... [続きを読む]

【第1340話】
「彼岸の人」
2025(令和7)年3月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1340話です。 八木澤克昌さんは、誕生日を2日後に控えた1月7日、66歳で急逝しました。私も顧問を務める公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)で、タイ・ラオス・カンボジア・ミャンマーの事務所長を歴任した方です。アジアにおけるNGOの先達として、困難な人々のために生涯を捧げたのです。... [続きを読む]