テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第785話】「棺桶」 2009(平成21)年10月11日-20日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第785話です。
 今山形が熱いです。大河ドラマ「天地人」のゆかりの地であり、アカデミー賞映画「おくりびと」の舞台にもなりました。というわけで、お檀家さんと山形路を巡る団体参拝旅行に行ってきました。
 鶴岡市羽黒町に松ヶ岡開墾場があります。明治初期、旧庄内藩士たちが、刀を鍬に持ち替えて、荒れ地を切り開き、養蚕を行ったところです。そこに木造2階建ての巨大な蚕室5棟が現存しています。130年程前の建物は圧倒的な存在感を示していました。そのうちの1棟の建物は庄内映画村資料館になっています。
 その資料館の入口を入ってすぐのところに、死んだ人を納めるお棺が展示されていてびっくりさせられました。勿論「おくりびと」関連の資料展示ということなのです。もっとびっくりしたのは、このお棺に入って記念撮影をしていかれる方もいるということです。まさかと思いましたが、一緒に行った方の中で、ちゃんとお棺に入って来た女性がいらっしゃいました。
 その女性曰く、「死んでからでは、どんな感じなのかわからないので、元気なうちに入ってみたかったの」。なるほど、お棺に入りたいと思っても、現実には簡単に経験できることではありません。お棺に入ったまま死んでいくというのでない限りは、自らの意思で、自分ひとりの力でお棺に入るということは、ほぼあり得ません。
 お棺に入ったまま死んだとしても、蓋をしてくれる人が必要です。「棺桶の蓋を覆うて分かるその人の一生」というようなことを言われますが、自分ひとりで何でも切り開いて、十分に力を発揮できた我が人生だったなどと嘯(うそぶ)いてはいけません。旧庄内藩士たちが、力を合わせて荒れ地を切り開いてきたように、自分の人生にはどれだけの支えがあることか思わずにはいられません。オギャーと生まれた時も、一人前になってからも、多くの人のお陰や、様々な命に支えられて生かされている私たちです。
 我が命の完結にも多くのお陰があることを棺桶は教えてくれます。せめて棺桶に入るまでそのことを自覚して生きれば、更に命は輝くことでしょう。分かりましたか、棺オーケー?
 ここでご報告いたします。9月のカンボジア・エコー募金は、93回×3円で279円でした。ありがとうございました。
それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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